栄光のランナー
今日、映画『栄光のランナー』を観てきました。
この映画は1936年のベルリンオリンピックで活躍したアメリカの陸上選手ジェシー・オーエンスの半生を映画化したものです。当時のアメリカの過酷な人種差別と貧困に苦しみながらもスプリンターの才能を武器に大学に進学し、やがてベルリンオリンピックで4個の金メダルを獲得するに至る活躍が丁寧に描かれています。
私はジェシー・オーエンスという陸上選手をこの映画で初めて知ったのですが、wikipediaで調べてみて、今更ながらその偉業に感動してしまいました。ベルリンで金メダルを獲り英雄として凱旋した後も、ホワイトハウスからはほとんど無視されたり、馬と競争させられたり、賞金稼ぎに参加してアマチュア選手の資格を取り消されたり随分苦労を重ねた人らしいです。映画の中でも人種差別のシーンがたくさん描かれていましたが、現実の差別はもっとエグイものだったでしょうね。胸糞悪い…。
ジェシー・オーエンスを演じた主演のステファン・ジェイムスはかなりのスポーツマンらしいですが、今回の撮影にあたり短距離走のトレーニングに励み本職の陸上選手に混じって練習できるまでになったそうな。それ以上に個人的に目を引いたのは彼の筋骨隆々の肉体です。私はウェイトトレーニングを趣味としているので(体はショボいけど)、ステファン・ジェイムスの肉体の仕上がりぶりに驚きました。スタローンやシュワルツネッガー等と違い無駄にデカくせず、上半身はムキムキ、足は細目というまさにスプリンターそのものでした。見た目だけでなく理不尽な差別に対して決して自暴自棄にならず静かな怒りと競技への闘志を燃やす目力があり表現力のある役者だったと思います。あと、ゲッベルスを演じた俳優(名前知らない)は何やら不気味な雰囲気を醸し出していて印象に残りました。常に無表情で背筋を伸ばした佇まいが冷酷さと冷徹さを醸し出しています。ゲッベルスってポマードで固めたオールバックの髪型だったと記憶していたけど、なぜか丸刈りになっていました。ネオナチみたいだね…。
史実をもとに作られた映画なので歴史を知っている方にとってはあらすじを読めてしまう映画かもしれませんが、何も知らない私はかなり感動しました。逆境をはねのけて功成り名を遂げる姿は感情移入しやすいですしね。また、人種差別国家であるナチスドイツ主催のオリンピックへ出ることへの葛藤、ドイツの走り幅跳びの選手ルッツ・ロングとの友情、恩師ラリー・スナイダーへの感謝・反発、妻子への裏切りと愛、レニ・リーフェンシュタールのオリンピック映画への執念など見どころの多い良作映画といえると思います。
シンゴジラ
シンゴジラを観てきました。
予想していた以上に見応えがあり面白かったです。ゴジラ映画を映画館で観るのは確か1991年の『ゴジラvsキングギドラ』以来実に25年ぶり!当時はまだ小学生だったかな…。私が小学生の頃、よく深夜に昭和のゴジラ映画が放映されていてビデオ(VHS)録画をしてよく見ていたものです。それがきっかけでレンタルビデオ屋さんでゴジラ映画のビデオを借りて昭和ゴジラはほとんど見ました。”予想していた以上に”とは実はあまり期待していたわけではなかったからです。平成ゴジラは何作かビデオや映画館で何度か見ましたが、私自身が、中学生になりゴジラ映画を観ることがなんだか子供っぽく思えてきて関心が薄れていったことと、だんだん映画の好みも変わってきたこともあり疎遠になっていきました。今回は16年ぶりのゴジラ映画だということと、お盆で時間に余裕があることもあって観に行ってきました。以下感想を述べます。
まず良かった点
映像がとても迫力がありました。ゴジラが上陸して東京で大暴れするシーンはホントにこれ日本映画か?と信じられなかったです。そりゃハリウッド映画の映像に比べたら若干見劣りしますが、それでもよくぞここまで作り込めたなと感心しました。邦画のCGってあまりにもショボすぎてがっかりさせられることが殆どですし。さすが東宝映画製作なだけあって何としてでもヒットさせるという強い意志を感じさせられました。今や東宝映画製作の映画ってゴジラシリーズだけらしいですしね。
また、ストーリーが割とスムーズにテンポよく進行してくれて、役者のセリフが長ったらしかったにもかかわらず自分でもすんなりついていけました。ストーリーといっても実は単純で、関東近海に謎の巨大生物が出現→巨大生物現れるも一旦海に引き返す→ゴジラに進化してもう一度上陸→戦うという流れなので途中で訳が分からなくなる難解さはないです。役者のセリフのテンポがよかったのと巧みなコマ割りも奏功したんじゃないでしょうか。
あと、役者が凄い豪華でした。長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、平泉成、…主要キャスト以外にも見たことある顔ぶれがゴロゴロいました。よくこんなメンツを集めたなあと感心しますね。
次に不満な点
ゴジラの造形に個人的に不満がありました。まず、最初に東京に上陸したときのゴジラは第1形態と呼ばれる四つん這いのイグアナかオオトカゲみたいな姿でしたが、あれはないだろうと思いました。最初はこれからゴジラと戦う敵役の(アンギラスみたいな)怪獣かと思いましたがゴジラになる前の幼虫みたいな姿だとわかりガクッときました。また、ゴジラの完全体に成長した姿で体の内部から赤い光が浮かび上がっていますが、あれもちょっと抵抗を感じてしまいました。やはり庵野秀明監督なだけあってエヴァンゲリオンの影響がどうしても出てしまうんでしょうね。或いは体から粘液を垂れ流す様はナウシカの巨神兵を思い出す。ゴジラには漆黒のボディにシルバーの背びれが一番似合うと思います!
また、ゴジラ自体が本作で完全にCG化してしまったのはちょっと残念です。特撮映画といえば怪獣のぬいぐるみを着たスーツアクターがミニチュアの大都市をぶっ壊す撮影風景が想像されると思いますがおそらく一切そういうのはありません。ちょっと風情が無いですが、これは時代の流れで仕方ないかもしれませんね。
役者のセリフが不自然に長いのも気になりました。有事にあたり官僚や学者が法律上の、あるいは技術的、学術的な専門用語の飛び交う議論が交わされることはあるでしょうが、あんなにくどくどと説明するような話し方をするのかなとちょっと疑問でした。観客に説明する意図もあったんでしょうね。
総括
このシンゴジラはシリーズ第1作目の『ゴジラ』(1954)をかなり意識して作られています。映画を観終った後Dailymotionで1作目のゴジラを観たんですが、話の流れが殆ど一緒でした。庵野監督のリスペクトが感じられます。
主演の長谷川博己はじめ出演者の演技もゴジラという未曽有の脅威に対する緊迫感をうまく表現出来ていたんじゃないでしょうか。英会話教室のCMに出演していた石原さとみの英語の発音が下手糞らしいですが、そこは言わないであげてほしいですね。
本作は”日本対ゴジラ”というキャッチコピー通り、主に政治家、官僚の立場の人たちが総力を結集してゴジラに立ち向かうという内容です。前例のない事態に直面して右往左往する政治家たち、放射能をまき散らすゴジラの脅威に福島の原発事故を重ねる人は多いようです。また、意思決定に時間のかかる日本、自分たちでどうすることもできずアメリカに泣きつく日本、諸外国から理不尽な決定(本作では東京での核兵器使用)を押し付けられる日本といった具合に色々と日本の現状に思いを馳せる方もいらっしゃるようです。が、私はそういう深読みは不要で単純に怪獣映画として楽しめればそれでいいと思います。絶賛するほどではないですが、十分楽しめる映画でした。
終わり方が続編を匂わせているように感じたんですが、どうなんでしょうね…
名古屋城宵祭り①
先日、名古屋城宵祭りというイベントに行ってきました。これは毎年お盆の時期に10日間行われる夏祭りのようなものです。普段一人でいることが殆どなのでたまには人の多い所へ行ってみるか、と思い出かけてみました。
思ったより人は少なかったです。みんなお盆は遠出している人が殆どなので城に来る人は少ないのかもしれません。私の一番の目的は現在再建中の本丸御殿を見学することでした。尾張三河は城でもつ、なんていう言葉を聞いたことがありますが、実は名古屋城は石垣と一部の櫓以外は空襲で焼かれていて、現在建っている天守閣も戦後に建設された鉄筋コンクリートのビルです。本丸御殿も焼失したのですが、現在かつてと同じ木造で再建工事が行われています。完成した部分から順次公開しているので、観に行ってきました。
続く